歯は、全部で何本有るかご存知でしょうか?
親知らずを除くと、全部で28本有ります。
そして28本、全部「形」も「大きさ」もまったく違います。
「えっ」って思われるかも知れません。
歯は28本なんですが、その28本、1本たりとも同じ「大きさ」「形」は無いのです。
法医学ですとか、よく事故とか、例えば航空機事故など、遺体の身元を発見する時に、「歯の形」「レントゲン」その様な物で、個人を特定したりします。
これを法歯学と言います。
歯には、28本「形」「大きさ」が違うと言う事は、どんな意味があるかお分かりになりますか?
それぞれの歯の持っている役目、役割、機能が違うと言う事です。
28本のうち、2本や3本歯が無くなった、でも噛める。いいじゃないか!
と思いますよね。
もちろん噛めるかも知れない。
でもそれは、なくなった歯の事を、歯の代わりを代償する歯は実はどこにもないのです。
バランスが崩れてしまうのです。
歯が28本有ると言う事で、私は噛み合わせの事を「おみこし」で例えたりします。
28本、上下で14本づつで28本、左右だと7本7本、上下左右7本づつです。
7本7本7本7本で、28本です。
つまりおみこしで、片方に7人、片方に7人、合計14人でおみこしを支えている。
その様にお考え頂いたら良いと思います。
その14人、全員が元気な14人ではございません。
大人もいれば、子供も居ます。
大きい人もいれば、小さい人も居ます。
大きい人ばかりであれば、大丈夫かも知れませんけど、残念ながら小さい人もいる訳ですね。
では、下の歯の前歯を見てみましょう。
下の歯の前歯は、小さいですね・・・先が尖っていますね・・・根っ子は細いですね・・・
1本ですよね・・・ではこれを立ててみましょう。
立たないですよね。
すぐ倒れます、棒ですから。
すぐ倒れちゃいます。
つまり私が例えとする所では、歯と言うのは、畑に大根が植わっている様に、骨の中に植わっている、もっと言い換えれば、砂の山に棒が刺さっている状態だとお考え頂いたら良いです。
そこに力が加わると、棒は倒れて行きますよね。
では次に奥歯を見ていきましょう。
上の奥歯、いわゆる6番目7番目と言う表現をします。
その歯は6歳臼歯って言いますよね、6歳臼歯、6歳の時に生えてくる訳です。
ものすごい役目をします・・・家で言う大黒柱です。
見てみましょうね、臼状の形をしています、根っ子は3本も有りました。
何かに似ていませんか?・・・カメラの三脚です。
カメラの三脚どうでしょう?
自分で支えますよね。
つまりこの奥歯は力を支えることが出来る、その様な構造になっています。
それに対して前歯は、根っこが1本ですから、その様な力を支えることは出来ません。
つまり人間て言うのは、臼状の部分(奥歯)、ここで力を支え、噛む事をし、磨り潰すと言う事をする訳です。
では前歯は?・・・そんな力はありません。
草食動物、肉食動物、その両方を持ちえる事が出来たのが人間なんです。
奥歯で支え、奥歯で磨り潰す、しっかりと奥歯で支える。
そして前歯は、奥歯で噛んだ時当たらない、当たらないと言う事がものすごく大事なのです。
もちろん矯正治療の様に、歯を残念ながら、上下左右1本づつ抜かれた方、いらっしゃるかも知れません。
歯を抜いた場合は、もうその時点で28人が24人になっちゃってます。
4人足りないわけです。
そうすると、奥歯の人が、支えることが出来ませんので、矯正の治療をした方の中には、わざと前歯を当てる様にしている先生もいらっしゃるかも知れません。
そう言う特殊な事を除くと、奥歯で支えて、前歯は当たらないって言うのはすごく大事な事なのです。
前歯にはそもそも、力を支える、噛む事をする、その様な能力、そのものが無い訳ですから、その所で噛んでいたら何が起こるのか・・・。
当然、出っ歯になっていきます。
だんだん崩れて行きます。
そのうち歯は、倒れて行きます。
最も分かり易いのは、上の前歯を両手の指で上から押さえてみて下さい。
唇ではないです、歯を直接です。
その時に奥歯で噛んでください。
ガンガンガン・・・もしその時に上の前歯が揺れていたら、歯が揺れる、ビックリしないで下さいよ。
カチカチカチと噛んだ時に、上の歯が動いてくる歯が有るかもしれません。
実際によくあります。
奥歯を長年噛めない状況で、例えば、入れ歯などをされていた患者さんは、奥歯で支えることが出来ませんから、前歯がガンガンと当たります。
そうすると、上の前歯が揺れていく訳です。
話は戻りますね。
砂の山に挿してた棒を揺らすとどうなるでしょうか?
まず、砂の入り口ですよね、棒の挿さっている部分、ここの砂が崩れますよね。
さらに大きく揺らしてみましょう・・・イメージして下さい。
どんどん周りの砂が崩れて行きます。
そして棒は、倒れて行きます。
歯はどうでしょうか?
同じ運命を辿る事となります。
歯は、それぞれ機能が有るわけです。
奥歯は、臼状の力でもって、力を支えることが出来る。
つまり、力の有るお父さんだと思って頂いたらいいでしょう。
それに対して前歯は、細くて小さい、子供達・・・
真ん中の歯は、4番目5番目、お母さんというところでしょうか・・・
奥歯でしっかり支える、6番目7番目の歯が無くなった途端、歯は、どんどん崩れて行く訳です。
おみこしをいつもは、14人で支えていました。
その内4人がお父さんでした。
しかし、ある時からお父さんが一人抜け、二人抜け、最後にはお父さん4人が全員いなくなってしまった。
残った子供達やお母さんでおみこしを支えなくてはならなくなった。
そしてどんどん、その力に耐えられなくなって、有る程度の期間は持つかもしれませんが、その重さに耐えられなくなって崩れて行く、こんなイメージです。
ドミノ倒しの様に崩れて行く訳です。
なので、バランスが必要なのです。
例えば「インプラント」治療もそうです。
「インプラント」ってものいい物、その様な捉えられ方をしている先生も多くいらっしゃいます。
また、そういう情報を聞いて、ものいい物だと思われている方、多くいらっしゃるかも知れません・・・。
でも、よく考えて見てください。
「インプラント」・・・これは単なるネジです。
ある程度までは大丈夫かも知れません。
しかし、もし強い力が掛かったらどうでしょう?
折れ曲がれませんか?・・・折れたりしませんか?・・・
つまり、「インプラント」だから大丈夫、という事は全くないのです。
考え方は先ほどのおみこしのイメージと全く同じです。
必要な場所に、必要な本数の太さと長さの「インプラント」が無ければ、例え「インプラント」であっても、噛む力に耐えることは出来なくなってしまいます。
少ない本数で「オール・オン・フォー」インプラント治療というものがあります。良く聞かれますが、太くて長いものでなければ、4本では持ちません。
また日本人は、西洋人の様に骨格は、厚みが有ったり、硬さはありません。
そのことが原因で、日本人はインプラント治療の失敗を良くしています。
もともとの設計が悪い訳なのですね。
また、「インプラント」は、自分の歯の様に、バイキンに対する抵抗力は、まったく有りません。
インプラントは、単なるネジです。
必要な場所に必要な本数が無いと支えることができません。
自分の歯が右で、「インプラント」が左で、自分の歯の右がダメになったから、でも左に「インプラント」が有って、しっかり噛めている。
だからこのまま噛んでいこう、とします。
どんなことが起こると思いますか?
左ばっかりで噛むということをすると、「インプラント」が耐えられなくなって崩れていくのです。
崩れ方は本当に人によってさまざまです。
それはもういろんな事が起こってきます。
噛み合せは、顎が動きたい様に動ける状況にしておく。
このことがとっても大事なのです。
そうしなければ、カチカチ噛むという事しか出来ません。
でも顎は動きたいんです。
動くだけでなく、磨り合わせられる様にする。
その為には、上と下が面のように、動けなければいけないのです。
どこかがデコボコ飛び出てたり、何処かが引っ込んでいたりすると、ギリギリ合わすと、そこが引っかかってしまいますよね。
そうすると、崩れていってしまう訳です。
例えば、「右の上が飛び出でて、右の下が引っ込んでいる」歯と言うのは、前後的、上下的にお互いが、助け合って、お互いが支えあって成り立っています。
歯は、例えば、抜けたならば、左右の、前後の歯は、倒れて来ます。
上下で噛んでいて、下の歯が無くなれば、上の歯が飛び出ていきます。
上の歯が無くなれば、下の歯は飛び出ていきます。
そうすると、そのまんまでは、本来の場所に歯を作りたくとも、作れなくなってしまいます。
なので、その場だけの継接ぎ的な治療を行っていると何が起こるかと言うと、飛び出てきた上の歯に合わせて、へっこんだ下の歯を作ってしまう訳です。
そうすると、その場でのカチカチとする噛み方は出来ますけれども、磨り合わすと言う事は出来ません。
それによって何が起こるんでしょうか?
右、左、前後左右、振り子の様に顎を動かす時に引っ掛かってしまいます。
そうすると、横揺れの力が歯に加わり、歯は崩れて行きます。
もちろん「インプラント」なんてのもはひとたまりもなくやられていきます。
ですので、上の歯と下の歯はスムーズに、顎が動けるような配置でなければいけないのです。
場合によっては、飛び出ている上の歯を調整しなければ、下の歯が入りませんから、その様に全体のバランスを考えて、作っておけなければ、数年は大丈夫であっても、十年後、二十年後、キチンと良い状態に保つことは出来ないのです。
上の歯が、ダメになった・・・
なので「インプラント」をして欲しい、そう言う患者さんも良く来られます。
上の歯のなくなった部分、そこに「インプラント」をして歯を作る。
良いかもしれません・・・
ただ、なぜ上の前歯がダメになったのか?・・・なぜ上の歯がダメになってしまったのか?・・・これを診断、そしてその対策、処置をしておかなければ、大変な事が起こります。
上の歯が、ダメになった理由、そのほとんどが下の前歯が関係しています。
噛んでる相手ですよね。
それが関係していることが多いのです。
下の前歯が飛び出ていて、そこによって突き上げられた上の歯がダメになった、って言う患者さんの場合いかがでしょうか?
本来あった場所に歯を作れば何が起こるでしょうか?
ガンガンガンと、ぶつかります。
強く当たります。
また壊れてしまう訳です。
「インプラント」と言うのは、被せをしていますから、その被せが「壊れる」「割れる」それなら、作り変えれば良いですね。
強く当たっている訳ですから、「下の前歯が割れる」「下の前歯がちびる」ということが起こります。
よく上の前歯を何本もブリッジした人が、「下の前歯がどんどんちびていった」「下の歯を削られた」その様な事をおっしゃる方も多いかと思います。
理由はそう言う事です。
それは説明が足りなかったんだと思います。
そして、最悪なのは「インプラント」が折れる、「インプラント」を支えている骨が骨折する、下の前歯が割れる、下の前歯が折れる、下の前歯がどんどん内側に倒れていく、色んな事が起こります。
無くなった所だけを、そこだけを回復したとしても、次はまた起こってくる訳です。
ダメになった原因を追究し、その原因を取り除かないと、同じことが繰り返したり、さらにはもっと悪い事が起こったりします。
上の前歯がダメになった人、「割れちゃった」「外れちゃった」とおっしゃられる方。
外れた方は考えてみて下さい。
外れた時どうでしたか?
私以外に、この質問はする先生は少ないかと思いますが、「外れた時いかがでしたか?」
何か楽になりませんでしたか?
寝起きとか、体の体調とか、何か変わりませんでしたか?
楽になっていません、そんな質問を投げかけることがあります。
ほとんどの方が、歯が無くなった事で「実は楽に噛める様になった」そう言う事の返事が返って来るんです。
ですので、同じ場所に歯を作れば、当然またその不快な生活が戻ってしまう訳です。
確かに、「歯が無くなった所に入れる」正しいかも知れませんが、それでは十年後、二十年後まで良い状態を保つ、これは不可能な事になります。
ですのでその場合には、全体のバランスを考えた設計、これが大事になります。
吉本歯科医院
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